93.筋トレを科学する:代償動作
2023-09-10
カテゴリ:生理学
皆様こんにちは、こんばんわ!
明楽フィットネスクラブの藤井です!
第93回のコラムテーマは【筋トレを科学する:代償動作】と題してお話したいと思います。
代償動作とは、ある動作や運動がおこなえなくなった際に、その動作に必要な主たる筋肉ではなく
他の筋肉の働きで動作を補う身体の機能のことを指し、元来リハビリの分野で使われる言葉です。
トレーニングの中でイメージするとしたら、仰向けになったところから腹筋動作で上体を起こす際に
腹筋のチカラだけでは起き上がれなくて、両手を振り下ろすようにして勢いをつけて起き上がる動作や
アームカール(ダンベルなどを持った状態で腕を曲げる動作)をおこなう際に、重さや疲労により
挙げきれなくなったとき上体を軽く後ろに反らすように反動をつけたりするのが代償動作に入ります。
今回のコラムではこの”代償動作”について、トレーニングの観点から分析し、解説していきます。
● 代償動作は是か、非か
さっそく本質的な話になります。
トレーニングの中で代償動作は良いことなのか、それとも悪いことなのか、です。
まず皆さん、ご自身のトレーニングを思い返してみてください。
パーソナルトレーニングを受けたことがない方でも、フィットネスのスタッフやトレーナーに
必ず最初に言及される内容、それはフォームではなかったですか?
正しいフォームでないと狙った筋肉への刺激が弱くなり、つけたくないところにまで筋肉がついて
しまう可能性も、なんて話を聞かされたこともあるのではないでしょうか?
これすなわち”代償動作”のことを指しています。
つまりトレーナーや一般的なトレーニングしている方々は”代償動作”はできるだけない方がいい、
という意識が強く根付いていると言って差し支えないと思います。
しかしどうでしょう? 通ってるジムで良いガタイのトレーニーがなかなかの重さでガンガンに
トレーニングしている姿を想像すると、入会当初にスタッフに教えてもらったような、
めちゃくちゃキレイで丁寧なフォームでやってるでしょうか?
その人たちは”間違った”トレーニングを繰り返しているのでしょうか?
実はココがトレーニングにおける代償動作の難しい部分でもあり、また逆に言えば、
理解しておくことでトレーニング効果を大きく左右する技術にもなり得るものになるのです。
● 代償動作の効果
前述のアームカールを例に深くみていきましょう。
ダンベルを手に持ち、代償動作を極力抑えたうえで肘を曲げてきて上腕二頭筋(ちからこぶ)を
収縮させ刺激を与えているとしましょう。
代償動作がほぼ出ていない、肘の曲げ伸ばしのみがキレイに丁寧におこなえている場合の
上腕二頭筋への刺激の度合を”10”としましょう。
数回、繰り返すうちに疲労により、最初の可動域が保てなくなってきました。
さらに回数を重ね、いよいよダンベルが最初の可動域の半分以下になってきたとき、
当然上腕二頭筋への刺激も”10”とはいかず、もはや”3”や”2”くらいかもしれません。
そこで代償動作ありきでも、再度、可動域を取り戻し多少の勢いをつけて肘の全可動域、動かします。
もちろん代償動作なしのときの刺激度合”10”よりは、代償により他の筋肉へ負荷も逃げてしまいますが
それでも可動域が狭すぎるときの刺激度合よりも上腕二頭筋への刺激は増し、”5”や”6”くらいは
稼げるかもしれません。
かなりザックリな説明でしたが、代償動作をトレーニングで取り入れるのは、あくまで狙った筋肉への
刺激を高いレベルで保ちたいがための手法です。
前提として、正しいフォーム、代償動作の極力出ないフォームでの動作で狙った筋肉への刺激を
最優先として、キレイなフォームが保てなくなってもなお、もう一押し追い込みたい、というときの
ための技法として使用できるのが”正しい代償動作”だと筆者自身は考えます。
そもそも代償動作というもの自体が、人体のシステム上、効率良く身体を動かすための機能として
備わっているものなので、本来備わっているこの機能を完全に抑え込んで身体を動かそうとする方が
もしかしたら多少不自然なことなのかもしれません。
無理のない(身体への限界を超える負担など)範囲で代償動作がありながらも、それでも狙った筋肉へ
なるべく強くダイレクトに近い刺激を入れられる技術を積み上げていくのもトレーニングにおいて
重要な課題ともいえるのかもしれません。
それでは次回のコラムもお楽しみに!
Training Enriches Your Life♪
Written By MeirakuFitnessclub Fujii.